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日本独特の石臼はいつころからあったのか。かって某テレビ局の大作ドラマで、壬申の乱(672年)に石臼を挽く貧農の老婆が登場したことがある。農民が石臼を持つようになるのは、それから約千年近く後のことである。あたかも今から千年ほどまえの清少納言がワープロで枕草子を書いているマンガに匹敵する。
ではもう少しデリケートで、秀吉の時代だったら農家の老婆が石臼を挽いていてもおかしくないだろうか。実はこの頃もまだ石臼は一般農家にひろく普及していなかった。そもそもなぜ老婆なのか。石臼を挽くのは力のいる仕事だったから、嫁が挽いた。だからお嫁にやるときには、先方で挽きにくい重い臼を挽かされてはかわいそうというので、母はお嫁入り道具に、自分の挽きなれた石臼を持たせることもあった。大正末期から昭和初年頃になつて、市販の粉の普及にともない、石臼は次第にすたれてゆき、若い女はカツコウわるいから挽かなくなった。その頃のお年寄は昔を懐かしがって、若い頃口づさんだ「粉挽き唄」で調子をとりながら、石臼を挽いていた。そんな風景を見た記憶をもつ世代が、老婆と石臼をドラマに入れたり、絵を描いたりしたのである。これから五○年も先には、ワープロなど昔話になるだろうから、ワープロで手紙を書く老婆のシーンが出るかも知れない。