このシンポジウムの趣旨
日本にあって外国にない食物の代表は豆腐である。高句麗から610年に(推古10)伝来して以来1000年を越える星霜を経て、江戸時代には一般大衆へ普及し、豆腐売りは時計だといわれるくらい、日本人の食生活を支えてきた。それがいつの間にか伝統を無視した工程の工業化で本来の豆腐が失われた。その主原因は製造工程で重要な役割をもっている石臼が高速回転のグラインダーに変わったことにあった。さらに作業のしやすさを求めて凝固剤(にがり)の種類などもさまざまである。
豆腐発祥の地、中国の淮南でも現在は日本のグラインダーのコピーが使われていた。韓国でも家庭用石臼が骨董屋の軒先に山積みされていた。
最近のスーパーの豆腐は1丁50円を切っている。原料の大豆よりも安い豆腐だ。一方で都市部には「コダワリの豆腐」と称して1丁1000円を超える豆腐もある。コダワリの豆腐とは何か?それは果たして本物か。
こういう話は営業妨害にもなりかねないので、決戦は関ヶ原でと水の都大垣で旗揚げした。今豆腐は遺伝子組み換え大豆でも話題になっている食材で、豆腐屋のイメージチェンジのチャンスである。シンポジウムでは実際に伝統の京都の営業用石臼を電動化した機械で豆腐を試作した豆腐屋さんの協力を得ている。