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涙の茶臼物語:宇都宮に茶臼をこよなく愛する婦人あり。
1999.10.27. 宇都宮の主婦から心温まる茶臼情報が来た。
一見並の宇治茶臼と見えるが,下臼の受け皿の縁の色が変わっている部分がある。この部分が桐の木で補修されているとか。この茶臼の持ち主のこの茶臼に向けた愛着はものすごい。
「この臼の持ち主さんの臼に対する心が伝わってくる気がして,一日中昼も夜も臼を撫でまわしている自分がおかしくもあります。でも変なもので撫でていると何だか落ち着くのです。茶を挽くともっと落ち着きます。」
石川慶子様 茶臼の便りをありがとうございました。今年になって茶臼発見のニュースがこれで3件目です。いずれも涙がこぼれるようなお話です。いずれも茶臼がいかに大切なものであったかを語るものでした。 お写真にあるものは木で補修してありますが,それは傷ものではなく,持ち主がいかに大切にあつかったかを示しているもので,茶臼の世界ではまたとない貴重品とされています。昔茶臼は金では買えないとてつもなく大切なものでした。ですからもし扱いが悪くてわれたら切腹獄門ものでした。同封しました茶道の同門誌にそのことを書いたものがありますので,ご覧下さい。これは生々しいNHKの切腹獄門の話です。 その証拠になるのは第一に奈良の佛隆寺にあるという金泥で補修した茶臼です。私はまだ見る機会を得ていませんが,宇治の茶臼研究家大西さんがご存知です。そこで木で実に巧に補修した茶臼が見つかったニュースは直ちに大西さんに伝えました。彼もおおいに喜んでいました。是非見たいが宇都宮は遠いなとのこと。私は遠くてもいずれ拝観に伺いたいと思っています。大西さんというのは抹茶の飲み方,一般にお茶の飲み方で,たびたびテレビに出ている方です。 今年の4月には大阪城で瀬戸白磁の展示会があり,それに瀬戸で茶臼を白磁でつくった見事な作品がありました。これがあることは以前から聞いていたのですが,持っている方が偏屈(?)な方で見せてくれない。彼の生きている間はだめだが待ちましょうといわれていた代物でした。 ところが奇異なことに先月瀬戸の窯跡からの発掘品に室町時代の陶器製上臼が見つかったニュースを聞き,日本臼類学会の緊急集会を大西さんほかの方々と埋蔵文化センターで開きました。室町というと夢窓国師の時代ですが,すでにそのころから,石臼が手に入らないので,瀬戸物で挑戦した人物があったことがわかりました。本来瀬戸物は壷のような薄い道具を作るのはわかるが,茶臼のような分厚い代物は乾燥に大変な苦労が伴います。乾燥だけでも涙がでる話です。 同門誌平成4年2月号にはこれも涙の話,石がないので,松脂で砂を固めて作ったらしい茶臼の話を書いています。 いずれにしても木できれいに補修されていることは驚きで,そして嬉しくて余計なことまで書きましたが,ご免ください。こんな話は現代っ子に聞かせたいものですね。 とりいそぎお礼まで。
1999.10.27. 臼類資料室 三輪茂雄