鳴き砂とは
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鳴き砂はなぜ鳴くの?

左は普通の砂        右は鳴く砂
 鳴き砂の 発音メカニズムの説明は面倒だから、一般マスコミには謎にしてあるが、
一口ではいえないためである。ここは秘密のページだから一応の説明をしておく。
解らなくなったらやめればいい・
 棒を突っ込んだとき普通の砂は音が出ないのに、鳴き砂は音が出る。 上の写真は、 普通の砂と 鳴き砂に棒が入ったときに起こる現象を強力X線カメラでとらえたもの である。左は普通の砂、右は鳴き砂。はっきり違いが分かる。  鳴き砂では白い線がいくつか見えている。この白い線の正体は、砂の中で砂が すべったときにできる断層のようなもの。これを剪断崩壊によるすべり帯という。 動くために砂全体が規則的に膨らんで砂のなかに隙間ができたわけ。このドラマチックな 砂の動きがあの音の原因である。
 鳴き砂に貫入棒を貫入させると、鳴き砂の特異な摩擦特性のために、砂層中に周期的な
剪断崩壊が発生する。貫入開始時点では砂は静止摩擦により棒を支えているが、静止摩擦
により支え切れなくなると、剪断崩壊を起こす。写真の白い帯は、すべり帯と呼び、
緩い充填状態のため白く写っている。
 ゆるい充填状態になるために、砂は上方へ押し上げられる。ひとたび崩壊が起こると、
砂は運動摩擦係数にかわるが、運動摩擦係数は静止摩擦係数より小さいから、棒を支える
力が急激に低下し、棒の貫入が起こる。
 動いたとたん力が解放されるから静止摩擦にかえる。この過程の繰り返しが砂全体の
周期的上下運動を引き起こし音を発生する。このときのすべり帯の幅Δhと、崩壊の
周波数fは次の(1)式で示される(下記文献参照)。
 ここで、Bは貫入棒直径、Vpは貫入棒の貫入速度、φsは静止摩擦角、φeは動摩擦角、
Nは整数ですべり帯の数である。
  1. 式は静止摩擦角と動摩擦角の差、すなわち静止摩擦係数と動摩擦係数の差が大きく なれば、すべり帯の幅Δhが大きくなる。Δhが大きくなれば
  2. 式の右辺の分母が大きくなってfが小さく、すなわち周波数fが小さくなることを 示している。2. 式から周波数は整数N=1,2,3・・・だから低周波数倍音構造に なるわけ。
 このように鳴き砂の発音機構は完全に解明されているが、上記のような面倒な説明は、 テレビや新聞にはなじまないのも理解できる。
参考文献:
1)日高重助、三輪茂雄、下坂厚子:化学工学論文集、12,[2]192-198(1986)
「粒状体の流動における音の発生機構」
2)牧野和孝、日高重助、牧春彦、三輪茂雄、Thomas P. Meloy:粉体および 粉末冶金,第29巻,7号 229-235(1982) 『プランジャーの貫入により形成される粒子存在密度分布について』
3)Hidaka,J.,Miwa,S.,Makino,K.:International Chemical Engineering,Vol.28., No.1,99-107(1988)"Mechanism of generation of sound in shear flow of granular materials"
普通の砂と鳴き砂とどう違うの?
 鳴き砂は水晶と同じ石英が主成分で、石英がきれいな水や空気のなかで互いに
動いている中に、砂粒の表面が磨かれて出来たもの。普通の砂は大抵
汚れていて粒子表面の摩擦係数が低くなりX線写真のよう
なダイナミックな運動が起こらない。
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