女川原発に続き巻原発と対峙した鳴き砂
朝日新聞1982.12.10 原発予定地野鳴き砂 聞こえぬか東北電力さん
準備本部で30年で廃炉になる原発と永遠のロマンとどちらがと問うた私
第1便 東北電力株殿 1982.11.22
原子力発電所建設予定地になっています巻町角海浜の砂の学術的な重要性に注目して研究を続行しております一研究者でございます。去る1982年9月9日に現地に赴き浜砂約10キロを採取してきました。それを光学顕微鏡で観察しましたところ、砂粒子表面に著しい土砂による汚れが付着していましたので、水による機械洗浄を行いました。予想以上に汚れの固着が甚だしく濁り水がほとんど出なくなるまでに延べ約500時間を要しました。さてこの洗浄した砂を乾燥しましたところ、まぎれもなく、鳴き砂と称される極めて珍しい浜砂であることが確認されました。
角海浜が鳴き砂である可能性については、かって角海に居住しておられた方々の記憶から聞き及んでおり、さらに顕微鏡による観察からも推定されましたが、発音特性を回復させないかぎり、客観的立証にはなりません。今回の試験により、まさにその発音特性の回復に成功したのです。実験方法や角海浜に注目した経緯、ならびに鳴き砂の学術的意義については添付資料『鳴き砂幻想』に詳しく述べております。
発音特性を回復した砂はいつでも公開できる準備が整っております。洗浄は海の波の洗浄作用を再現したもので、それ以上の処理、たとえば化学薬品処理などは行なっていません。したがって時間をかければ誰でも再確認可能です。つまり鳴き砂であることの判定は十分な客観性をもっているものと確信いたします。
すでに御社では鳴き砂の鑑定を某民間の調査機関に委託し、鳴き砂ではないとの判定を得ておられると聞いています。たまたまその機関で鑑定を担当された方は私の知人ですので鑑定方法をお聞きしたところ、洗浄は行なわず、単純な発音試験であったこと、およびその結論は曖昧なものにしておいたとのことでした。古来著名な鳴き砂の浜でも土砂などの流入により汚れた場合には洗浄しなければ発音しないことはよく知られています。
今後の発電所建設計画にどうこの結論を反映させるかは、別問題として、角海浜の鳴き砂につき、御社が誤った、あるいは曖昧な判断に基づいて計画を進められることは将来に問題を残します。ことに鳴き砂は極めて珍しく貴重な大自然の芸術作品であること、および一度破壊すれば再び帰らぬ環境にあることを考え会わせ、遅まきながら私の結論をお知らせする次第です。
なにとぞ慎重に御審議の上、適切に対処されますよう希望いたします。
1982年11月22日
同志社大学工学部教授 三輪茂雄 浜で砂供養(町内全浄土真宗の寺に参加を呼びかけたが賛同を得られず自力で仏説阿弥陀経を読経した。これはNHKの全国放送された。これが角海原発と角海の鳴き砂の対峙のはじまりになった。
女川原発建設では遅くて出足を挫かれたが、その怨念からここでは全力で努力しようと決意した。