ベイルビ層の存在

 摩擦によって起るもう一つの事実も見逃せない。非常に細かい粉末を二面間に挾んで互いにこすり合わせるときには、磨かれた固体(たとえば金属やシリコン)の表面屑に特殊な層が形成することがある。これは1921年、ベイルビが発見したものである。これをベイルビ層(Beilby 層)と呼ぴ、この層の存在は電子線回折や化学的方法で確かめられ、物質によっても、また磨く条件によってもちがうが、ふつう50ミリミクロンほどの厚みであるといわれている。非常に微細な結晶層、または無定形層などから成り立っていて、化学的活性を示し、酸化層になっている場合もある。  

 この現象は身近な自然にも存在する。海岸である。私は真冬の京都府丹後半島の鳴き砂の浜辺で図のような現象を見てこれだと思った。

 

 次々に荒波が砂の岸辺に打ち寄せる波頭は岸辺に近づくと、波頭が次第にそそり立ち、遂に最後の力をふりしぼって、砂の堆積の斜面をかけのぼる。最高点に達すると、いま駆け上がった砂の斜面を降るが、ちょうどその頃、次の波頭が突進してきて、駆け降りる前の波と激しく衝突する。そのとき、新しく来た波頭が上、前の波頭が下になるため、そこで激しい渦流が発生する。私はここにボールミルがあるのだと見た。

 ボールミルは普通は無数の鋼球を入れている。これは無数の杵を備えた粉砕機械と見ればよい。ここに私のサイトが鳴き砂と石臼を混みにしている理由がある。

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