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いままで隠していた秘密の教授ノートを公開することにした。
本当は発刊時に先生向けに出したいと出版社が言ったのだが、間に合わず仕舞いになっていた。
一般に売り出して学生に出まわっても、どうせ自分でやらねば解けないのだから構わない。
会社で新入教育のとき「これをやれ」とだけいって、
自分で解答したことがなくてもやらせれば必ず解答がでるから、お役に立つかも知れない。
化学工学または化学工学演習という科目を、20年あまり毎年学生に講義してきた。
150人位のクラスで一年間40講時だからかなりのレポート分量になる。
そのため、採点は休日の仕事になる。 「バカモン!、自分で考えろ」と言えば済むものばかりだ。安心して解答を待てばよい。 多分私の著書を使っていただいている先生がたも、そんな悩みをおもちに違いない。 授業のはじめに、テキストの要点だけ約15〜20分位説明して、 あとは「ヤレ!」と命ずるだけでよい。授業開始に遅れたらついてゆけないし、 居眠りしている暇もない。 例題でも 必要な要点はどれかもかいてある。ただし解答は完全にはしてない。 でも必ず学生は自分で考えて電卓なり方眼紙や定規、コンパスなどを使って解いてゆく。 進行状況でいつ頃どんな質問がでるかわかっているから、 頃合いを見て黒板に絵を書いたり中間に見せる数字も書いてある。 最後に到達すべき解答の数字がでると、学生も満足して粉体工学が楽しくなるようだ。
私の授業に試験はない。試験問題というのは、必要にして十分な条件が設定されて問題を解くものだ。
しかし実社会ではいらない情報がたくさんあって、肝心の情報はない条件で、問題を考えるものだ。
そして肝心の情報は自分で探すものである。すべてのレポートを集約して採点するから、
点数は一点刻みの正確無比。 「この砂粒は何個あるか?をどうやって計算するかと問うて考えさせる。分からないだろう。 それを簡単にやるのが粉体工学の粒子統計学だといって、ふるい分けによる粒度測定、 平均粒子径の計算などのテキストの要点を示して、計算問題をやらせる。 別に実験の時間には実際に3000個くらいの粒子を直接算定させる。その質量は、 化学天秤で秤かる。絶対に直示天秤は使わせない。 1ミリグラムを目で見たことがない学生では困るからである。 実験といえば、気温、湿度計、気圧なども自記記録計なしの本物で測定する。アスマンの 湿度計で湿度をはかる時、ファンが故障したことがあった。計れませんという。 「アホ、そこの団扇(うちわ)でやれ」 最近の学生は私語が多いから、時々大声でどなる必要がある。怒って机を手で叩いて、 骨折した大先生ありと。私の授業はいつも複合材料製の白色の教鞭を使う。 この新素材の音は竹の鞭の比ではない。振動コンベア部品で使い古した破損品の再利用である。 これで最初の講義でバンと机を叩いて一発やっておけば、あとは無言で教鞭を見せるだけでよい。 昨年郷里の成人式に呼ばれて講演したことがあった。 どうせ田舎の野郎どもや娘ッ子だからと持っていった。案の定会場はガヤガヤ。 役場の人が制止しても駄目だった。 バン一発の威力は凄くて感心された。これも私のとっておきのノウハウだ。 |
三塗(さんず)の河原の砂の数 (意味がわからない学生がいるようだ。 さんずのかわらとは冥土の地獄へ渡る川) |