朝日新聞の記事(1999年11月21日(日))

 キュツ、キュツと、歩くと軽やかな音をたてる鳴き砂の浜。海の汚染や開発で姿を消しているが、かつて鳥取砂丘にも鳴き砂の浜があったことを、三輪茂雄・同志壮大学名誉教授(72)(粉体工学)が確認した。鳴き砂保存に取り組む「全国鳴き砂(鳴り砂)ネットワーク」(事務局・財団法人日本ナショナルトラスト)もこれまで把握しておらず、21日に神奈川県藤沢市で開かれる「'99全国鳴き砂(鳴り砂)サミットーN湘南」で報告される。 岩戸海岸で鳴き砂 鳴き砂が確かめられたの.は、東西約15キロにわたる鳥取砂丘の東端にある岩戸海岸(鳥取県福部村だ。西日本の日本海側には、京都府網野町の琴引浜、島根県仁摩町の琴ケ浜など鳴き砂の浜がある。鳥取県内でも青谷町の海岸が鳴き砂で、三輪さんは近くの鳥取砂丘にも鳴き砂があった可能性があると考えた。  そこで鳥取砂丘の砂を採取して顕微鏡で調べたら、鳴き砂に特徴的な「高温石英結晶」が含まれているとわかった。その砂は鳴かすことはできなかったが、結果を昨年発表すると地元の研究者から、「昔は砂丘の端に鳴き砂があった」と証言が集まった。 今年、夏休みの自由研究で鳴き砂を取り上げた京都市中京区の中学二年生、勝山由香さんが、鳴き砂に詳しい三輪さんのもとへ、岩戸海岸の砂を持ち込んだ。その中に高温石英結晶があったため、砂を煮沸洗浄したところ、押すとキュツ、キュツという鳴き砂独特の音色を出した。勝山さんは「四年生の時から鳴き砂を調べてきたが、自分でも驚いた」と話す。三輪さんは「鳴き砂は各地にもっとあったはず。子どもたちが探してくれれば、まだ新しい発見ができるだろう」と期待している。

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