通算第10回世界鳴き砂調査団報告 1997年8月16-18日
三輪茂雄、安藤典毅、滝川尚史
現地の真言宗寺院(Waimea Shingon Mission)の紹介で現地は軍事基地なので司令官Capt.Thomas
Daniels(Commanding Officer Pacific Missile Range Facility P.O.Box 128、KEKAHA,HAWAII,USA
96752) の許可を文書で得た。カウアイ島には現地時間で16日Aloha航空機空港到着。快晴の翌日、Mana地区に入る。基地ゲートは許可書提示でOK。入門は4時以降。あらかじめ昨年現地を訪問した東海大学海洋学部の木村正雄教授から参考資料を得ていたので確認できたが、わかりにくい地形であった。基地からビーチに沿ってしばらくゆくとバーキングサンド地帯の砂丘があった。 しかし期待して砂丘をのぼったが、発音する気配はなくがっかり。まさに荒廃した砂丘。だが海からの風は猛烈に強いから砂は風でかんぜんに洗われているから砂の安息角は中国沙漠で見た角度に近い。一面にはびこっている自生の植物(kiawe)がなければ発音するはずだ。現地ラジオ放送のインタビューがあったのでこう伝えた。「現地は荒廃している。現地博物館でも現在の状況は知らなかった。あそこは軍事基地で誰も入らない。昔話でしかない。バーキングサンドではなく,ノンバーキングサンドになっていた。ハワイでも鳴き砂を守る会を作る必要がある」と。観光案内にはサーフィン場とあり、カウアイ島の夜店ではBarkinng
sand のサーフィンを形どったTシャツがあった。
左はTシャツの絵柄のサーフィン、右は現地風景
Barking sand surfboards Hawaii Kauaii(吠える砂サーフボード)と。Waimea Shingon Mission(ワイメア真言宗寺院からの手紙に、「Barking
sandはご存じの様に、昔は見渡すかぎり砂山だったのが、現在ではkiaweという樹が密集して砂の部分が少なくなっておりますが、一番良いのは6月-8月の暑い季節で砂が乾いている時期です。近年雨が少ない為に5月初旬でも良いと思いますが軍事基地になってから、ローカルの人は出入りしなくなりましたので知人たちにも問い合わせましたが最近のことはあまりわからないそうです。」とあった。平日は4時以降許可があればゲートを通してくれるが、土曜日曜はだめという。われわれは調査を終えてゲートに来たら完全に閉鎖されていて困った。入門のとき閉門についてなにも言わなかったのにだれもいない。軍事基地の有針鉄線を越えるのはいかにもヤバイ。困り果てていたら軍人の車が通ったので止めて聞くと「アナザーゲート」。あわててその車をつけてセーフ。
新知見はカウアイの砂は石英ではないことだ。古文献の通りカルシューム質だということ。しかも珍しいことに有孔虫(foraminifer)の、それもとくにAmphestina
lesonii d'Orbignyの死骸が非常に多い。だから19世紀からシンギングサンドではなく,バーキングサンドと呼んだわけだ。ちなみにWaimea
海岸でも、また島の北部の海浜でも有孔虫とくに上記種がおびただしい数の漂着が見られた。熱帯には有孔虫がたくさんいるといわれるがその通りである。しかもその大きさが数ミリ程度なのに驚いた。バーキングサンドは石英ではなく石灰質であるという文献の記載は間違いではないことが確認できた。