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歴史的連想ゲーム
粉と聞いて大部分の日本人は「小麦粉」を連想し、パウダーといえば西洋人はたいてい火薬(powder)を連想する。日本人は小麦粉別名メリケンコ、アメリカから入った真っ白の小麦粉を見て驚いた明治の人たちの記憶が今に根を引いている。下記は1970年代初頭に大学の講義のはじめに「思いつくまま粉の名を書きなさい。」と2-3年間行ったアンケート結果の集計である。大部分が工学部生であった。
1970年代の調査
1. 小麦粉 548
2. セメント 463
3. 砂 299
4. 砂糖 296
5. 石灰 250
6. 食塩 244
7. 化粧品 214
8. 粉末洗剤 193
9. インスタントコーヒー 183
10. 化学調味料 178
同じ調査を10年後にやったら、首位小麦粉はそのままだったが、後はまったくバラバラの食品や化粧品。これは生産材としてのセメントや石灰、砂などが街で見かけなくなったことを意味する。若者の知識のありかを尋ねる試みだった。現代文明の一風景である。
2002年になると小麦粉の首位すら消えている。日本人の遺伝子に刻まれていた記憶も完全に消えているのを知って愕然とした。
またある化学工場で聞いてみたら、ほとんどがその会社の製品名だった。だれひとり地球上にもっとも普遍的に存在する土をあげる人はいままで一人もなかったのも不可思議である。人間は土の上で生活し、土の恩恵で育ち土に帰る運命にあるのに。