リンク:集団作業としてのもちつき|郡山市美穂田町でも2003.9.20日に実施されたhttp://www.kfb.co.jp/hensei/bangumi/gasagasa/page006.html参照
集団作業の指導要領
毎年、学生が新しくなるので、熟練者に期待するわけにはゆかない。現代の学生諸君は、勿論、もちつきなんか経験がない。そこで、諸事手配書を示して役割分担を明確にして、何日も前から準備万端整える。集団でひとつのことをやる訓練にもなる。当日は多くの学生が集まる。準備作業の一つに、黄粉(きなこ)づくりがある。大豆を買ってこいと命ずると、「エッ、黄粉のもとは、大豆ですか?」と、真顔で聞く学生も毎年何人かいる。加工食品万能時代の悲しい現実である。大豆煎りは、ふるいで○・五ミリメートルほどに粒ぞろいにした砂と大豆をフライパンでかきまわしながら煎った豆を石臼で粉に挽く。挽いた粉は、目の大きさ0.5ミリ位のふるいで通す。「市販品より粗いですよ、これでいいのですか」と質問が出る。好みにもよるが、すこし粗い目のほうが、舌ざわりがよく、香ばしい。また、黄粉を餅にまぶした「あべかわ」には、粗いほうが餅がくっつかなくてよい。
市販の黄粉はロール製粉だから、粒がそろっていて細かい。見かけはいいが、香ばしさがなく、舌触り、歯に感ずる抵抗といった複合的な食味にかけている。こうして食べ物を作りながらわいわいがやがやさわぐのが人間本来の楽しさであろう。道具のなかに大根おろしがあるのは、黄粉だけではあきるし、消化がよいためで、「おろし餅」に人気があった。
あるとき、電気もちつき機がいいと、主張する学生がいた。そこで新しい機械を購入し、彼が、向うを張って実演した。ところが、まったく人気がない。やむなく杵臼の餅にまぜて、ならべたが、すぐ学生たちに見やぶられて売行きはさっぱりだった。比較すれば誰にも本物はわかる。現在の校地は完全舗装か芝生で自由な地面がない。コンクリート舗装はもちつき大会になじまない。道具は博物館のように入庫したままだが、いずこかで復活したいものである。もちつきの伝統の風化が集団行事の風化、人間関係の変化につながるのは見るに耐えない。