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粉体工学実験マニュアル(日刊工業新聞社刊,絶版)より
.試料の分割と縮分 (このファイルは11KBです)
液体や気体は,かくはんすれば均一になり,代表試料を採取するのに特別な工夫を必要としない.ところが粉体は,移動やかくはんにより,粒度あるいは比重差に基づく分離偏析が起る. 試験法がいかに正確であっても,あるいは高価な測定器であっても、試料の扱い方が適切でなければ信頼できる結果が得られない.したがって,試料の分割と縮分は粉体工学実験の基本である.
大量の粉体試料を,互いに等しい組成をもつ複数部分に分ける操作を分割という.機械装置の性能試験や,粉体製品の試作試験などのさい,複数個の原料粉体の条件を一定にする必要がある場合に行う.
粉体製品の受入検査,出荷検査,工程管理などの場合,大量の粉体から,少量の代表試料を採取する操作を縮分という. 上記の分割操作を繰り返して縮分する場合と,抜取りを系統的に行い,それらを合せてから分割操作を繰り返して縮分試料を採取する場合とがある.
1.1 二分割器(chute riffler)
図1.1のように,シュートが左右交互についた器具により,粉体の流れを左右二方向に分ち,二つの受箱に受ける構造になっている.試料に含まれている最大粒子がシュートに詰まらずに流れることが必要で,粒度に応じたスリット幅の二分割器を選んで使う.比較的よく乾燥した流動性のよい粉体用には適しているが,発じん性や,付着凝集性の粉体には不向きである.このような場合は,特殊フィーダの付属した後述の回転分割機がよい.
受箱は最小限3個準備する.この受箱は重宝なので,流用して紛失しがちであるから,使用後は必ず揃えて保管するよう心がけることが必要である.
Fig.1.1 (a) 中型二分割器概略寸法
Fig.1.1 (b)少量の試料にはアルミ箔などで 継目なし二分割器をこの要領で作成する。(これは学生の宿題に好適)
1.1.1 二分割操作の実習
受箱のひとつに8分目ぐらいの粉体試料を準備し,分割操作の実習を行う.そのさい,次の事項に留意する
・ シュートや受箱に付着しているほこりを,刷毛か圧縮空気でよく払いおとす.要すれば水洗する.
・ 分割すべき試料を,受箱に入れるときは,箱の長辺方向に振りながら,層状にすこしずつ積むようにする.粒度分布の幅がひろくて偏析しやすい試料の場合,このことはとくに重要である.
・ 受箱の長辺をスリットの方向に直角にして静かに容器を傾けて流し出す. 急激に注入すると,双方のシュートから流出する粉体重にアンバランスが生じ, 分割精度を低下させる. これは注入するさいの慣性で,一方のシュート側に出やすいからである.
したがって細い流れにしてスリットに直角方向にふりまくのもよい.
1.1.2 Carpenterの左右相殺法
製作精度のよい二分割器でも,左右のシュートから出る粉体の量と粒度には多少の偏りが存在する.
Carpenter(文献3)は次のような相殺法を提案した.
図1.2に示すように,分割操作を繰り返してNo.@-Gの分割試料をつくり,次に@とG,AとFというように合せて,4つの分割試料をつくる.このようにすれば表1.1に示すように,左右に出た回数が,4つの試料について同回数となる.
表1.1 左右相殺法の意味
分割試料No. | 左側 | 右側 |
@ | 3 | 0 |
A | 2 | 1 |
B | 2 | 1 |
C | 1 | 2 |
D | 2 | 1 |
E | 1 | 2 |
F | 1 | 2 |
G | 0 | 3 |
@+G | 3 | 3 |
A+F | 3 | 3 |
B+E | 3 | 3 |
C+D | 3 | 3 |
1.1.3 32分割の実験
試料を2の5乗=32分割する場合,二分割器で単純に分割を繰り返すのと,左右相殺法を行うのと,どのような差があるかについて実験してみた.
Carpenterは粒度分布の幅がひろい(2mm-50μm)ガラス球について実験し分割試料の重量分配の均等性を,左右相殺法の有効性の目安とした.
表1.2は同じ方法で,粒度分布幅のひろい(3 mm-10μm)シリコンカーバイドのフレットミル粉砕物(耐火物用)を32分割したときのデータである。メーカ一側の出荷検査と,ユーザ側の受入検査の相違がたびたびトラブルを起し,その対策として,相互で分割法につき検討した例である.
なお左右相殺法では,第2分割のさい,@+GとA+Fを,またB+EとC+Dを,それぞれひとつにまとめた.分割試料の重量分配の標準偏差をみると,明かに左右相殺法がすぐれていることがわかる.
1.2 円錐四分法(cone and quartering)
この方法は古くから化学分析用試料の縮分法として知られてきたが,流動性のよい粉体試料の場合には,粒度偏析のために分割精度は,二分割器よりもはるかに劣る.
しかし,2分割器がつかえない付着凝集性の粉体や,湿った粉体には,特別な器具を要しないために,しばしば利用されている.
1.2.1 円錐四分法の実習
図1.3 円錐四分法の基本
・ 図1.3(a)のようにアルミ箔を1,2,3,4の順に重ね合せる.
・堆積の中心Cの真上に漏斗(75mmφまたは30mmφ)をおいて,粉体を鉛直に落下させる. 炉斗を通らない付着凝集性の粉体は,目のあらい網に粉体をのせ,ブラシでこすりながら堆積させる.
スプーンで少しずつ落したり,小型振動フィーダを利用することもある.
・堆積し終ったら図1.3(a),(b)のように堆積を円盤状にひろげ,次にアルミ箔をずらせて,四分割し,互いに向い合った二つの部分を合せ,1回の操作で2分割する.
1.2.2 Carpenter法の適用
この場合も二分割器に準じCarpenterの左右相殺法を試してみた.表1.3はそのデータの一例である.左右相殺法は明らかに有効である.
1.3 積層交互ショベル法
図1.4 積層交互ショベル法の基本
試料を図1.4に示すように,少しずつ促状に積みあげ,次に一方の端から順に垂直に切りとって交互に左右に分けて二分割する. .少量のときは円錐四分法のときのように,アルミ箔を並べるのが便利である.この方法はあまり精度がよくないが,特別な器具を要せず,比較的大量扱うときなどに便利である.この原理は鉱石などを屋外で大規模に分割するときにも利用できる.
1.4 回転分割機(spinning riffler)
図1.5 受器回転型とノズル回転型
図1.5に示すように,受器回転型と,ノズル回転型とがある. 前者は比較的少量の分割に適し,後者は受器の大きさに制約がないので,扱い量に制限がなく,大形の分割装置をつかって,何トンもの分割にも実用されている. 試料の分割にとどまらず,製品出荷の場合のロット間の偏りをなくする目的にもつかわれる. 分割数は1回で12分割ぐらいが最大で,それ以上の分割数にすると,偏りが目立ってくる. 回転数にも最適値があるので,質量分配精度を目安にチェックする. 設計上は回転軸を確実にし,完全な水平回転を確保することが必要である.
1.5 流れ切断法(stream cutting)
図1.6(a)図1.6(b)
a)のようにホッパ全量の粉体を流出させながら,その代表サンプルを採取するときは,一定時間々隔で,流れを横切って容器に試料をとる. (b)のようなサンプラーをつかえば工程中で行える.
この場合,流れの切断形状(C)に注意する必要がある. 流れには偏析があるので,均等に切断する方式がよい.
参考文献
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14) Kaye,B.H.: Powder MetaI.,〔9〕213-234(1962)”二分割器,回転分割機,円錐四分法,すくいとり法などの相互比較データ”
15) Close,P.:GIass Ind.,43,〔12〕655-659,696-697(1962)”ガラス用砂などのサンプリングの実際的諸問題"
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