日本人形にも環境ホルモンの余波が

今でも牡蛎(かき)を石臼で挽いている。

1998年2月23日も稼動していた(撮影三輪茂雄)

 私の自宅に近い毎日通勤に通る道路脇に、中川胡粉工業の牡蛎の貝殻山がある。20年近く前からの見なれた風景だった。この会社は食用の牡蛎(カキ)の貝殻を細かく粉砕して日本人形の肌色を出す胡粉(ゴフン)をつくっている。昔は江戸や生駒山近辺にもたくさんあった工場だ。ところが最近その貝がめっきり小さくなった。1998年2月23日(月)にたまたまそこの社長さんの顔が見えたから、お久しぶりとあいさつついでに「最近貝がめっきり小さくなりましたね」というと、「そうだ、困ったもんだ。日本には牡蛎がほとんどいなくなったから、中国から輸入しているが、まもなくそれもなくなるらしい」とおっしゃる。「なぜですか。」と聞くと「貝の世界的な絶滅ですよ」。

 「あ、あれですか。いよいよ来るものが来ましたね」という会話。日頃食卓にでる牡蛎も今は輸入だという。「そういえば桑名の蜆(シジミ)も最近はアサリに変わりましたね」

 さすが世界をかけめぐっている大社長だ、現実を正確につかんでいると感心した。数年前まではこんなに大きかった。

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