リンク:ひととき失われた照島の鳴き砂


 熱心な中学生から鳴き砂について質問が来ました。それも鳴き砂の証拠を示すための面 倒な実験や顕微鏡観察まで行ったもので、私は感動しました。みなさんの参考のため筆者の許可を得て公開します。福島県いわき市の照島で、乱開発によって一時は完全に失われ土建業者によって封鎖されていたこともありました。

 沖合にあった残りの鳴き砂が再び復活したわけです。すばらしいことです。

三輪先生 こんにちは。Tue, 7 Aug 2001

  私は、中学1年生です。夏休みで照島の鳴き砂を調べています。 何度か行って、その日の砂の状態を観察しています。 砂浜全体が湿って、鳴き砂自体を調べることができない日もありますが、浜辺での新しい発見もあり、とても楽しんでいます。 その中で、できれば教えていただきたいことがあります。 現地で鳴る砂が、家に持ち帰って乳鉢でもう一度確かめると、鳴かなくなったり、鳴きが悪くなったりすることがあります。。 その砂を、去年採集したよく鳴いた砂と比べるのにビンに砂を入れ、水道水でかき混ぜ、砂が沈み落ち着いてから水に濁りがでるかどうか調べたところ、少し白濁するようです。去年採集した砂の水は透き通 っています。

 煮沸洗浄すると鳴るようになります。 水が白濁するのは2つ考えられるとのことを公害センターの方から教えていただきました。一つは牛乳、もう一つは石の粉だそうです。そうだとすれば、サーフゾーンのアモルフォスシリカがウォッシュゾーンの海水でよく洗浄されない状態で乾いた砂であると考えてもいいのでしょうか。それで鳴いたり鳴かなくなったりするのでしょうか。 それとも、もっと別な理由があるのでしょうか。 お教えていただければ、とてもうれしいです。

  照島の砂に、その日によって無い日もますが、貝殻の欠けら混じりで高温石英のたくさんある粒の粗い砂の集まりが、波の引いた後の浜辺で見かけます。

 双眼実体顕微鏡で観察したら、その砂の中にベニバイやハリウキツボと思われる他にも2種類の微小貝を見つけました。elphidum crispumやpararotalia nipponicaと思われる有孔虫もたくさん見つかりました。有孔虫は、普通 の砂の中でも見つかりました。 とても残念だったのはペレットもあったことです。照島の鳴き砂が少しでも戻ってきたのに、人の自然に心配りするやさしさが欲しいと思いました。 三輪先生 失礼いたします。

私の返事

 久野由香子様

> 照島の鳴き砂を調べています。

  なくなったと思っていました照島の鳴き砂がもどって来たことを調べていただいて、私はうれしくてたまりません。

> 家に持ち帰って乳鉢でもう一度確かめると、鳴かなくなったり、鳴きが悪くなったりすることがあります。

  それは野生の草花を持ち帰るとシオレルのと同じことで、鳴き砂が活きている証拠です。

>煮沸洗浄すると鳴るようになります

 その通りです。煮沸だけで十分です。しかし煮沸は30分間にしてください。それ以上でも以下でもだめです。また乾燥するときは新聞紙ではなく、できれば和紙の上で乾かしてください。印刷インキは大敵です。

>アモルフォスシリカがウォッシュゾーン・・・・  

 私のHPを読んでいただいているようでうれしいです。アモルフォスシリカというのは石英同士を水とともにゆっくりこすりこすりあわせるとほんの僅かずつ生成します。アモルフォスシリカは水に僅か溶けますが、すぐもとの石英の表面 に付着して石英の滑らかな面を作り出します。これが鳴き砂の表面が光っている原因です。海水は砂の表面 をただ洗うだけではなく、こすり合わせてアモルフォスシリカを作り出しています。

  >高温石英・・・  照島でこれも見つかるようでそれは私も知りませんでした。間違いなくその浜の砂が鳴き砂である証拠です。

>ベニバイやハリウキツボと思われる他にも2種類の微小貝を見つけま>>した。elphidum crispumやpararotalia nipponicaと思われる有孔虫>もたくさん見つかりました。有孔虫は、普通 の砂の中でも見つかり>>ました。

  そこまで調べていただいたのはほんとうにご苦労様でした。たいへんだったでしょう。 そしてペレットも。 今年の11月17-18日には気仙沼で全国ナショナルトラストのサミットが開かれますのでそのとき貴方の研究を紹介させていただくつもりです。 とりあえずご返事まで。なにか質問があればご遠慮なくどうぞ。

三輪茂雄先生 Fri, 10 Aug 2001

 照島の鳴き砂についての疑問に、ご返信をありがとうございました。 「鳴き砂は、草花を持ち帰るとシオレルように活きている証拠です。」 について、理解するのが私には、まだ難しくも思えました。 シオレルということに水かしら、土かしら、温度かしらと考えてしまいます。でも、何となくわかります。砂は、ナイロン袋に入れられるより、太陽に照らされたり、潮風にそよがれたり、波に洗われたり、生まれた自然の家に居るほうが幸せなんだと思います。 でも、知りたくなります。 鳴かなくなった鳴き砂を広口のビンに入れ水道水でかき混ぜると、ほんの少しですが水が白濁します。 ナイロン袋の中で擦れた砂の粉でしょうか。

 ここ何日か照島の浜辺が湿っているので確かめられませんが、広口のビンをもって砂浜で直接、現地で水のようすを鳴く砂で調べてみたいと思います。 有孔虫を集める良い方法に気がつきました。 広口のビンに砂と水を入れてよくかき混ぜ、しばらくすると砂の上に白いものが溜まります。それをスポイトで静かに吸取り皿の上で乾かす方法です。 白いものが気になって調べたら有孔虫でした。 照島の高温石英について 照島の東端の八崎にラピリストーンという石の露頭があります。

 その中に、沢山の高温石英が含まれています。 茨城県日立市の初崎海岸にも同じものがあるそうです。でも初崎海岸のものには貝化石も含まれているようです。 お盆が過ぎると夏休みも終わりに近づきます。そろそろ照島の鳴き砂についてまとめなければと思います。 最近、父も鳴き砂に興味をもってきました。アドバイスはうれしいのですが、暇があると鳴き砂の話しで他の宿題ができないので困ってしまいます。 お盆が近づくにつれて照島の浜辺に人が多くなってきました。 ゴミも増えてきました。砂浜も足跡だらけで鳴き砂も調べずらくなってしまいました。 照島の鳴き砂はとてもつかれているようです。 三輪先生、ご教示ありがとうございました。失礼致します。

久野由香子

私からの返事

 久野由香子様  

 メールいただきました。  >有孔虫を集める良い方法に気がつきました。 というのはとてもいい方法です。皆さんにも参考になりそうなので、私のHPにそのまま紹介したいと思いますがよろしいか。  なお京都の琴引浜を調べている同じ中学生の勝山由香さんからたまたま同時にメールがあったので貴方のアドレスを知らせました。メールがあったら交信して情報交換して下さい。

三輪茂雄先生 Sat, 11 Aug 2001

 ご返信ありがとうございました。 たびたびメールをして済みません。 有孔虫を集める方法が皆さんの役に立てばとてもうれしいです。

 また、質問させていただいていいでしょうか。 鳴き砂の発音は石英だけにおこるのですか。 じつは去年、汚れのない粒状のものなら他のものでも鳴き砂のように鳴くのではないかと思って確かめてみました。鳴き砂のような音が出るものが見つかれば共通 点を見つけて発音の仕組みが解るのではないかと思ったからです。

  小麦粉、ココアの粉、米の粉、きな粉、片栗粉、ハイミー、塩、砂糖、砂鉄、石屋さんからいただいた石の粉、石に字を彫る黒い粒などです。砂鉄だけが、かすかにそれらしく聞こえたような気がしましたが、どれも鳴き砂のように発音はしませんでした。 三輪先生のHPに詳しい鳴き砂の発音のメカニズムの説明がありましたので理解できました。とても難しい仕組みですね。中学生の私にはとても調べられることではなかったんだと思いました。

  でも、疑問があります。

1、石英でしか鳴き砂の音はしないのでしょうか。他にも発音するものがあるのでしょうか。自然界では石英だけなのでしょうか。

2、鳴き砂のように細かくなれば他の鉱物でも鳴く可能性があるので しょうか。鳴いたとしても違う音で、石英特有の音なのでしょうか。

3、アモルフォスシリカが必要なのでしょうか。シリカを含んだ鉱物ならば他のものでも鳴き砂になるのでしょうか。 教えていただければ、とてもうれしいです。 でも、父から、私の知識で理解するのは難しいので、化学や物理を勉強するようになってから考えるようにして、今は目にしたことだけをしっかりと観察しなさいと言われます。父の言う通 りでしょうか。 京都の勝山由香さんを紹介していただきありがとうございます。 三輪先生、失礼いたします。

久野由香子

私から現地への書簡

いわき市鳴き砂を守会     大塚一二様  

 今夏は格別厳しい夏が続いていますが、その後いかがお過ごしですか。お具合はいかがですか。  ところで既にお聞き及びかも知れませんがあの照島の鳴き砂が復活しているという情報を御地の地元の中学生が知らせてくれました。久野由香子 さんです。 Iyokoin@beach.ocn.ne.jp>jyokoin@beach.ocn.ne.jp 夏休みの宿題だそうですがこの子は顕微鏡で実に詳しいデータを出しています。  砂の復活もうれしいですが、ここまでデータを出した人はいません。今秋のトラストのシンポで報告しますがいわきの守る会でも状況をお調べ願えれば幸いです。学校はどこか聞いていません。  とりあえず情報お知らせまで。 2001.8.13.                 三輪茂雄

 

現地鳴き砂守る会の反応

 前略 常日ごろよりのご指導深く感謝しております。先生よりのお葉書大塚先生経由で拝見しました。早速久野由香子(小名浜第2中学孝2年生)さん宅に訪ね本人と父親にもお会いしました。

 父親も岩石関係に造詣の深い方で由香子さんも鳴き砂の調査研究には恵まれた環境にあるようです。照島までの距離は彼女の家から約7キロ位 です。

 先生と 由香子さんの最近のメール交信内容も読ませていただきました。採取した微小貝の顕微鏡写 真や有孔虫をピンセットで砂粒から採取する様子なども拝見いたしました。本当に調査研究に熱心な中学生です。目にしたことだけでもしっかりと観察するようにとの助言も素晴らしいものです。

 また自然観察特に鳴き砂のような自然遺産をやさしく大事にするという本人の心は大事にしたいと存じます。

 夏休みも終わり砂浜の荒れもそのうち収まりますので、大塚先生と照島に行って来たいと思います。詳細はサミットの時に報告したいと思います。くれぐれも御身お大切にご活躍下さい。

早々

 2001.8.29           いわき市鳴き砂を守る会長      松川源吾

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