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失敗作のゆくえ

 1977年10月に私の古巣である昭和電工塩尻工場を石臼探訪の旅路で立ち寄ったとき、「あんたの好きな大きな巨大な臼があるよ。最近新工場の作業中に土中に埋まっていたものだ」と見せられた。工場史のなかにも取り入れるため最近展示したと。記録はないが多分以前の先輩技術者達の苦心の導入だったのであろう。私は1950年代に粉砕技術担当だったので、先輩に敬意を表すべきであろう。そして同じ形式の鋼製フレット ミルを導入した責任者だったから感慨無量だった。

 現場技術者の涙ぐましい苦心がわかるが、なぜ地中にうめられ記録に残っていないのか。多分失敗作だったと読んだ。大変な出費だから、上司にはバレないため内緒にしなければならない。

 石材は庵治石だった。庵治石は花崗岩では最も硬いことで知られている。しかし塩尻工場では耐火材や研磨材を生産している。いずれも庵治石より遥かに硬い。だから庵治石が摩耗して製品に混入したのであろうと私は推測した。

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