リンク:M信州セラミックス訪問記


 国際光触媒テクノフェア2004年(東京ビックサイト)で思ったこと       井上良子
 7月7日、大宮駅からりんかい線で東京ビックサイトで開催されている「国際光触媒テクノフェア」会場に行った。電車を下りると東京は34,8℃という暑さだった。ちなみに熊谷では37℃を超す暑さだったらしい。

 NPO法人環境ヒカリ協会、野村理事長と照りつける太陽にじりじり焼かれながら会場に着き、空調の利いた会場で人心地ついた。入場料2000円。立派な会場だが入場料も高額になったものだ。ひと昔前、粉体工業協会の仕事をしていたので(1975年ころから15年ほど)、今は取り壊されてなくなったが、晴海の国際見本市会場に、日本粉体工業展・日本食品工業展(日刊工業新聞、日本能率協会主催)に出展していた。晴海の会場はむき出しの天井、倉庫のような建物で、あまり格好のいいところではなかったが、ブースのレイアウトも手作りが許されていた。大型のプラント機械、機種さまざまで粉砕機から篩い分け、混合機、実験機器までが並び、機械の稼動音、工場のようだった。
 2コマほどのブースは、毎年遊び心が大半を占めていた。茶挽き人形(からくり人形)でお茶を挽き、江戸文字を真似たのぼりを立て、時には緋毛氈の縁台でお茶を飲んだり、まことにドンくさい飾り付けだったが人目を引いた。粉まみれ、砂まみれの実演もあり、祭りのような賑わいに製品の説明など求めなくとも、ブースの前を通る人が微笑を送ってくれた。
 多数の同業者の中で、一つでもビジネスチャンスに繋げたいと、必死に自社製品を売り込んでいる様子は以前も同じだったが、光触媒展は雰囲気が違う。それはたぶん出展112社が、最先端の科学の粋を集めた製品(商品)とはいえ、あまりにも似通った製品ばかりなことと、画一化された会場のレイアウトがスマートすぎるのかもしれない。

 国際光触媒展実行委員長 能村卓の挨拶文によると、「光触媒ビジネスの創出」をテーマとして、日本のオリジナル技術である光触媒の普及およびその適正な商品化への啓発を念頭に、グローバルな市場の創造を目的とした展示会だという。環境破壊は地球規模でとどまるところを知らない。環境問題は今、世界中で考え、取り組まなくてはならないときにきている。光触媒技術は7、8年前から商品化されていた。光と水によってもたらされる光触媒作用による一連の効果は、まさに環境に関わる産業のリーダーとなり得るものだろう。最も注目を集めている産業だけあって、各社しのぎを削って研究開発、ビジネスチャンスを捉えようと宣伝していた。

 私が「光触媒」というものの存在を知ったのは最近である。何がなんだかわからないまま、環境ヒカリ協会のセミナーの受付を手伝い、光触媒を知ったということだ。そして野村理事長に誘われるまま、光触媒を研究開発した(株)信州セラミックスを訪問、桜田社長の説明をお聞きした。また製品を販売促進している(株)タカハラコーポレーション 高原社長にもお会いして、直接製品についてお話を伺うこともできた。二度と社会に出て働けるとは思っていなかっただけに、このような機会をいただき、嬉しくもあり、反面、何がお手伝いできるかいささか心配でもある。しかし、知らないことを知る喜び、刺激のある生活は「生きている喜び、錆びかけた脳の活性」を感じる。
 これは世の常だが、注目を浴びている産業(商品)には紛い物も多い。両社長のお話を念頭において、カタログを下さった方に2,3質問してみたが、私の拙い質問にも納得できる答えはあまりなく、良い事づくめの話が多かった。NPO環境ヒカリ協会の使命は、皆さんに喜んで頂ける製品を紹介することにある。数ある製品の中から、本当に良い製品を見極め、一人でも多くの人に伝え、喜んでもらいたい。地球は化学薬品にまみれ窒息している。光触媒技術の進歩で環境に優しく、副作用の心配ない安価な製品で防菌、防臭、防汚、水質の浄化、空気の浄化が普及できたら、地球は生き返るだろう。かつての豊かな水資源も汚染が進み、膨大な薬剤の投入が続けられている。建造物によるシックハウス現象。空気の汚れなどによる感染症問題、薬害など。
 動物園のチンパンジーに鼻毛が生えたという話を聞いたことがある。また川の魚が雌化してしまうなど環境の変化がもたらす代償は大きい。生物は環境に順応して生きようとするが、順応しきれなくなったときどんなことが起こるか。これは人間にも当てはまる問題である。常に未来を背負う次世代の子供たちのことを考えて生きて行くのが大人の生き方だと思う。企業も個人も真剣に考える時にきている。本当の人生は60歳からだと言っている人がいた。
 環境ヒカリ協会のメンバーは、ほとんど60歳を過ぎているが、みんな「ここまで来れたのは皆さんのお陰。これから何かお返ししたい」といった心の持ち主ばかりだ。昨年7月1日、東京駅コンコースで、偶然、軌保博光という路上詩人に出会った。目の前にいる人のインスピレーションで詩を書くという。私は何にでも興味を持つ癖があるので、書いてもらうことにした。名前だけ書いて下さいという。そして、じっと私を見て書いてくださったのが次の詩だった。色紙いっぱいに、へたくそな字だがなんとも味がある字だ。
 良子の仕事は  良子がいっぱい いっぱい 
     すばらしさを知って  多くに伝え
         この星に 希望の花を咲かせること
何にでも興味を示し、そして面白かったこと、珍しかったことなど、誰かに話したい癖は治らない。軌保さんはそんな私を見事に見抜いたのだろう。私自身この詩がとても気に入っている。そしてもう一つ好きな軌保さんの詩がある。これは環境ヒカリ協会の詩とも言えそうだ。
  「百点満点」
  楽しみながら 人のため 
7月4日 朝日新聞の記事から一部抜粋
ジェームス・スキナー(経営コンサルタント・社会評論家・作家)
「仕事は社会のギフトである」「自分に集中するな お客様に集中せよ」。「仕事の壁に突き当たったり、困り果てている人を見ると、自分自身に思いが集中している。企業で働くということは、自分のキャリアを伸ばすとか、実績を作るのが目的ではなく、お客様、会社にギフトを差し上げることが目的です。お客様が喜んでくださること、差し上げればきっと喜んでいただけるニーズを掘り当てること。そのギフトを差し上げたい相手の目線で、とことん集中して考えれば必ず変わります。「仕事はギフト」この言葉を肝に銘じてほしいと思います。」

 新聞などで心に留まった文を見つけると切り抜いてしまう。時々息子から「俺が読んでから切ってくれ」と言われるが、後で切ろうなどと思っているうちに忘れてしまうので、怒られるのを覚悟で切り抜いている。

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