成功の可能性は?

 著書で石塚由紀子さんは次のようにまとめている。

「どんなことでも、私はその人の感性を大切にしたいと思っている,こちらが言.うことで、その人の何かが違っていってはいけないという気持が強い。とは言っても命に関係することはつらい。迷っている時ならまだしも、本人が決めてしまったことは、それまでの本人の生き方からみて、悪いことでない限り阻止することはできない。可能性を追求することが夢だと思うから、信じる以外にない。こう思うのは、自分が人に影響されやすいからだと思う。彼にとっても、私の影響力が大きいことはわかっていた。

 だからこそ、止めるのは私しかいないとも言われた。もちろん、まったく止めないなんていうことはあり得るはずもなく、信じると言いながらも、態度には充分に出すぎるほど出し続けていたし、言葉にも出し続けた。この講演会に取材に来ていた毎日新聞には、三日後にこう書かれていた。生身の人間が、高度一万メートルもの成層圏を長時間飛行するのは世界でも初めてで、学者も、「周到な準備をすれば、可能性はある」と話している。「戦時中の風船爆弾でも米国へ到達したのだし、目標が多少ずれることがあっても、太平洋を渡ることはできるだろう。生理学的な点は別にして低い気圧と温度、長時間飛行という三つの問題をクリアすれば、ナンセンスとは思えない」「酸素が希薄にな一り、脳に酸素がなければ、すぐ脳がだめになるので、酸素の確保が一番の問題。ジェット気流に乗ってしまえば、風がないのと同じ状態になるので、気温が低くても、防寒服のようなものがあれば大丈夫だろう。いずれにしろ酸素と保温性をしっかりすれば、不可能ではないはず。」この後6月25日にまた講演するという。教授は、米国ネバダ州リノのサンドマウンテンの鳴き砂と島根県琴ケ浜の鳴き砂が、同じであることを発見した。今度は、その琴ケ浜のある島根県仁摩町役場において、教授のすすめで彼が講演することになり、教授とともに出かけた。琴ケ浜の民宿に教授と一緒に泊り、そこでも、フランス映画の「赤い風船」のビデオ持参で行って、皆で見たという。「とても、いい所だよ。今度、一緒に来ようね」と、感嘆して電話してきた。」

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