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"粉"博士の執念健在
!石臼の豆腐づくりに挑戦
(デイリーフード誌増刊コンビスNo.68より)
同志壮大名誉教授 三輪茂雄さん
三月下旬、京都の豆腐屋さんで"石臼"を使って豆腐づくりのテストが行われた。原料大豆は国産二種(黄色・黒大豆)。関係者の中には三輪茂雄氏(73):同志壮大名誉教授・工学博士夫妻もいた。いまどき石臼で豆腐づくり?というなかれ。こだわり豆腐にのめり込むインターネット仲間が集まり究極の豆腐に挑戦しようというのである。そこで主役を演じたのが石臼である。そして三輪茂雄さんだ。三輪さんは同志社で粉体工学を教え、自然の素材を「粉」や「粒」にする歴史を通して、古代の技術から現代の最先端技術の世界をとらえるユニークな技術文化史を展開、この道の第一人者として評価を受けてきた。「私のライフワークを豆腐で見届けたい」と当日の三輪さんは目を輝かせてテスト風景を見つめた。石臼は50キロ(上臼)を超す重さで、動力を使っての回転速度(反時計方向)は一分問に55回転。ナガサワ式のグラインダーだと1400-1500回転だから約25分の一のスピードである。しかも石の重みと冷却効果が加わり呉のいたみが緩和される。三輪さんは「現在使われているグラインダーは能率は格段によいが高速のため微粒子の微妙な組織をずたずたに切断してしまうにと得意の持論を披露して、静かに回転する石臼からでてくる呉汁を凝視していた。テスト場所を提供したP久在屋(京都市右京区)の東田和久社長(42)は地域オンリーワン店を目指す気鋭の豆腐屋さん。「原料から、にがりから、水から本当に京都のものでやってみようということです。そしてそういう差別化を表にドンドン出していきたい」。脱サラのチャレンジ精神を持ち続ける東田さんは、高島屋京都店に直販店を持つほかJR 伊勢丹などにも納品して、ブランドの浸透にエネルギッシュな活躍をしている。 粉はモノ作りの原点 テストでは煮沸に独特の撹拌技術を採用、豆乳濃度13%、にがりで寄せた。試食会での感想のトップは「大豆臭(リポキシゲナーゼ)が完全に消えている」ことだった。そして二番手に「まろやかな味」。日本臼類学会(伊藤正理事長・岐阜県)にも関係する三輪さんは「いまどき石臼挽きの豆腐屋さんは珍しくなったが、粉の技術では湿式粉砕に属します。モノの全てが原点までたどれば、みな"粉"づくりから始まっている。豆腐づくりもこの点を大切にしたいですね」と石臼豆腐づくりに感銘を深くしたようだった。そして、「石臼の目立ては私が責任を持ちますよ」と明るい表情。"粉博士"の執念を見せつけられた思いである。(三輪茂雄氏-京都府宇治市明星町1-13-18、FAX0774-23-1481)