石臼挽きの美味しさ検証  (デイリーフード誌増刊コンビスNo.68より)

一釜分を25分、加水がポイント  京都久在屋 「大豆を石臼で挽いた豆腐は美味しい」。

 これを実証しようという試みが3月23日に行われた。会場になったのは「京の地豆腐」など、こだわり豆腐に積極的に取り組んでいる久在屋(きゅうざや・東田和久社長(京都市右京区西京極北大入町132)。東田社長が今年はじめから取り組んできた成果がお披露目された。 [むらゆたか、丹波黒で]  東田社長が石臼豆腐に取り組むことになったきっかけは昨年、岐阜県で開かれた石臼豆腐シンポジウム。粉体工学の専門家で同志社大学名誉教授らが、石臼の素晴らしさを実践している 司憲一さんらと親交があり、このときの「実験してみませんか?」との誘いに応じたもの。石臼は一月下旬に同席に持ち込まれ、その後、東田社長は利用できる時間の多くを費やして、試行錯誤を重ねてきた。今回は、その総仕上げとして実際に石臼豆腐をつくり、試食・評価しようというもの。三輪教授も駆けつけ、その成果を検証した。 今回の石臼挽きには、二種類の大豆を使用した。ひとつは、庄司さんが持ち込んだ大分・湯布院産の「むらゆたか」。もうひとつは最高級黒大豆の「丹波黒」。丹波黒を使うのは、東田社長も「今回初めて」という。 石臼挽きで試作を進める東田社長 [揺動で練り込む] 「大豆を石臼で挽いて作った豆腐は、旨味が違う。口当たりがソフトで、甘味がいきなり主張せず、ふわっと広がって、切れもいい」と東田社長は"石臼効果"を高く評価している。「石臼による磨砕は、砕く・潰すというより練り込む感じで、繊維感を失わない。例えるなら自然薯と長芋くらいの差がある。このため"呉"がしっかりしているので"炊き"が重要になる。通常と同じ時間や手間ではダメ。青臭味が出ない炊き加減をつかむまでは、苦労した」(東田社長)。石臼は直径が約40センチメートル、上白の重量がだいたい50-60キロあり、回転数はMAXで毎分55回。一釜分(約六升)のむらゆたかを挽くのに、約25分を要した。練り込むように挽いていく様子は、上白が描く不規則な揺動で見てとれるが、この動きを妨げない軸受け部の構造にパテントがある。丹波黒は粒が大きいため、これよりもさらに時間が要る。ゆっくりと時間をかけて挽くため熱が生じず、これが甘さの主張を適度に抑えるのではないかと考えられている。ポイントは挽く際に加える水の量で、多すぎても少なすぎてもだめ。適度な粘りの見極めが、豆乳の味を左右するという。豆乳はBrix13としている。丹波黒でも12以上。むらゆたかは寄せ豆腐で、丹波黒は豆乳で試食・試飲した。三輪教授は「通常のものを100とすれば180から200の評価」と絶賛。丹波黒の豆乳もさっぱりと飲みやすく仕上がったが、工程に時間を要したことから「使う大豆に合わせた目立てが必要」と課題もあげられた。商品化は今後の検討だが東田社長は「こういう豆腐を豆腐屋がつくらなければ」と意欲をみせた。

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