粉体工学会誌,37巻,No.7(2000)より

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豆腐づくり(1) 昔豆腐が懐かしい。

 私の田舎は四国の山間部で,向いの家は川のはるか向こう、隣家は山道を30分ほど歩かなければたどり着けないという,都会住まいの方々には想像を絶する場所でした。35年ほど前,電話もない当時,最も有効な通信手段は,はるか彼方の相手に向って大声で叫ぶ(現地では「おらぶ)と言っておりました)ことでしたが,長年培われた れた独特の言い回しとアクセントに規則があり,内容を良く聞き取ることができたと記憶しております。今で言うところの携帯電話なみの威力を発揮しておりました。r叫ぶ」という言葉には意味不明のことをわめくイメージがありますが,「おらぶ」は意味のあることを大声で相手に伝えるイメージで使用されておりました。もっとも,現在は電話の普及でrおらぶ」の役目はなくなってしまったようです。そのような辺鄙な場所ですからスーパーやコンビニなどあるはずがありません。そこで食料品は自前調達ということになります。豆腐もまた然りでした。急斜面の棚田の畦で育てた大豆を一晩水につけてふやかし,石臼で水とともに擂りり潰したr呉」を薪と釜で煮た後,木綿袋に入れて絞り,にがりを打って固めた豆腐は豆が少し焦げたような馥郁とした香りと旨みがあり,今の市販の豆腐とは全く別物でした。(TT)

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