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容器内気体の温度変化が流出量に及ぼし影響の考察
 砂時計の上下球が密閉状態の場合には、外気の温度変化や日光によりにより内部圧力が変化する。小形砂時計でも時間が少し長ければ下部球に触れるとストップするのはそれである。下手な手品のタネになることもある。上下球閉の場合には圧力変動により空気がオリフィスを通過して圧力の低い方に移動する。大きい容器ほど圧力変化による移動気体量が大きくなって、砂の流出量の変動原因になり、さらに閉塞の主原因になる。下部球閉の場合も開の場合にも、夜間の冷却により、とくに上部球の空気が収縮してオリフィスを上昇して閉塞原因となり、朝日があたると、上部球の空気が膨張して、吹き出す現象がおこる。実測結果では、昼夜の上下球聞の温度差は100mm水柱程度の圧力変動があった。上下球を開放にすれぱ変動はないが、これでは砂の流出量が過大になって砂時計を小さくしたい要求に合致しない。オリフィスを小さくすればよいが、限界流出ロ径に近づくのは危険である。これについては念のため確認実験を行なったが不可能であった。

原理的考察:

 気体法則よりpV=nRT p:圧力(mmHg) , V:気体の体積(ml), n:気体のモル数, T:絶対温度, R:気体定数

 上下球密閉ならV=一定, n:一定

pV/T=一定

一例として1気圧,20℃から21℃に上昇したとすれば、

 V=一定だから 760/293=p/294

 p=760*294/293=762.594mmHg の圧力上昇が起こる.

これは水柱では2.591*13.6=35.28mm水柱に相当する。

 上下ガラス球の外部温度変化が不均一ならば、その圧力差のために気体が狭いオリフィスをかなりの風速で上下し、砂の流れが止まることになる。

移動する気体量は、球の容積が大きいほど大きくなる。圧力変化前の体積をV,同じ圧力で自由に膨張したときの仮想気体量をV'とすれぱ
V/T=V'/T'

V'=V*T'/T=V*294/293=1.00341V

V'-Vの値は

Vが1000{ml}のとき (5lフラスコの場合に近い)

3.41[皿1]

Vが1000[l}のとき

3410{ml] (!年計の場合)

これはオリフィス部で著し吹き出しないし閉塞が発生する原因になる。


実際には気体の気温変化および砂層の温度変化は除々におこり、流出量の複雑な変動因となっている。

 砂層内での圧力分布もあって簡単ではない。

 上下の圧力差を一定に保つため、微圧力検出器として圧力伝送器(YAMAMOTO Electoric Work製EMT1B3FVPを用いて上球内の圧力を測定し、その出力電圧をレコーダ(TOA electorics製 PEGASUS)に記録させた。

表1は上下球とも開放と閉の場合であるが、上下開放では流量は倍を越えることがわかる。
表1

上下または一方を閉にすれぱ所定の流量がえられる。Fig.1は上球を閉にし、容器肉圧力を小形送風器により変化させたときの、流量変化である。容器内圧力は4.0-Omm水柱の聞に変化させた。1mm水柱程度の圧力変動で流量は大きく変化することがわかる。もう一つ興昧深いのは、流量120{g/hr]の付近で圧力変動の影響を受げない範囲が存在することである。この一定範囲が目標値と一致するのは偶然であるが、これが事実とすれば一年砂時計にとって好ましいことである。このことについては実装置で再検討する予定である。

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