石臼の未来を拓く若手の登場か
現代の臼師とはいかに。
下手な役者を石臼芸人という。茶臼師が石臼しか作れない石工を笑って石臼芸と呼んだことから来ている。茶人をうならせる茶臼が作れるのが茶臼芸。はたして現代の名工はどこに。
石工だから目たてできるとは限らない。現在では石臼芸でもいいから、臼のめたてがチャント出来る石工さんを探すのは至難の技だ。あっても偽物のことが多い。そのせいであちこちに有名デパートまで引き込んで偽物の石臼が氾濫している。中国製の偽物が一流デパートから通販で買ってどしようもないと私のところへ相談もあるが知ったことではない。「床の間の飾りにすれば?」と答える。
「石臼を作ってくれる確かな人はいないか。」という問が多い。下記は私が確認(1997.11.26)した間違いなく目立てしてくれる数少ない例だ。 1997年10月東京・科学技術館での全国蕎麦機械展でも出品した。1997年11月26日現地に訪ねて確認した。利休をうならせる茶臼師はまだとして現代ではそば臼では第一級の石臼師だと自称していた。
そこで試しに私の親戚から中古の石臼を送って目立てを依頼した。だがやはりみちのくだ。送り返して来た石臼は下臼が凸面になっていた。それをたまたま帰省した親戚の息子がそれを見て「イメージが変わった。こんなの家の臼じゃない」という。この辺反省を促しているが職人の強情さを克服できなかった。現代はもう職人時代ではないのだが。
そこで反省をうながして,図面つきで再修理依頼した。粉が先生ですよ。粉に教えてもらいなさいと。そして黙って出来た粉つきで送ってきた。私も黙って現地に行って確認した。さすがに下臼が凸面はなんとか修正できていたが。心棒の取り付け方がなっていない。「石臼はバカにしてはいけない。アバウトそうで精密な機械であるというのが,わかっていない。上下調節しようとしたが,まったく動かない。どうも金属の心棒が木と接着してあるらしい。心棒は軸受けの天井に接触していなけらばならない。そのまま無理して挽けば粉はでるが,出がわるい。これでは仕事にならないからそこで今回の試験は中止。あらためて出直して曲尺と道具持参で1日がかりで修理だ。
そこで
(〒963-3521)福島県田村郡小野町大字飯豊字袖山1
大千里石材店(Tel.Fax.0247-73-2231)
宛に下記の手紙を送ることになった。
大千里石材店様 石臼の再修理ご苦労様でした。田舎へ行って実験してきました。所詮石屋は石屋。臼屋は無理ということが明瞭になりました。これ以上無理はいいません。私がもう一度行ったときに1日がかりで,道具をもっていって修理することにします。
したがってホームページの記述も変えます。ニセモノのラベルをつけてならまだしも,他所へ行って石臼を直しますとはいわないようにして下さい。 日本の伝統技術の恥です。
1999.5.7. 臼類資料室 三輪茂雄
以上は以前に書いた文だ。それっきり返事がない。あきらめたらしい。
下記は同じ仲間で、まじめらしく、かなり元気にやっているし、私の日本臼類学会にも出てくる。
(969-4119)福島県耶麻郡山都町字江戸塚712
佐藤工房(0241-38-2875 FAX.0241-38-2975)
気に入らないのは東国流の下臼面が凸面で、6分画に固執していることだ。
ここ2-3年前から注文がくるようになり、今では年間100組を超える納入実績があるという。粉挽き臼とならんで茶臼も作る。この2人合わせて年間100以上日本中へ出しているという。いずれも代々石工だった家柄だ。現在は石材加工機械も各種導入しているから、たとえば複雑な家紋がある複雑な茶臼の加工も思いのまま。上臼の直径の上面を1mm大きくという注文もok。
店頭にはずらり作品が並んでいた。佐藤工房は電動式の営業用機械も製作している。
石臼探訪でいままで日本中を歩いたが、老石臼師とお墓に入った石臼ばかり見てきた。石臼復活はいよいよ現実のものとなりそうだが、まだ前途は遠い。
彼いわく。「1万人に1人は変わった人がいるはずだ。日本中には無数にいるわけだから、あわてることはない。十分飯を食ってゆける。西洋流の大量生産は考えていない。」。
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