亀井三郎『粉砕』(産業図書刊,昭和18年発行 199-206)絶版書より復活

 (以下の記述は大部分が小麦製粉の基本文献であるKozmin,P.E.:”Flour Milling”(George Routlege & Sons,1921) p.160-に基づいているが、西洋の臼の目についての学習に有効であるから,古書から復刻した。仮名づかいはできるだけ現代化した)

挽臼に普通に使用される石材としては花崗岩(Granite)砂岩(Sandstone)斑岩(Porphry)玄武岩(Basa1t)及び火山岩(Lava)等があり、特に硬質粉砕には石英岩(Qurtzite)が用いられる。特殊の目的には大理石及ぴ火石(火辺に石の字)器も用ひられる。特殊の目的には大理石及び火石器も用いられ,また人造石である金剛砂石(Emerystone)も用ひられる。後者では殆ど目立てをする必要がない。粉砕よつて発生する熱の為に石が不均一加熱を受け亀裂の生ずる虞れがるので注意せばならない。故に大きな挽臼ではその大きさ及び強さの点をも考へ単一の石で作る事ぱ稀で普通幾つかの部分から組合せ,セメントで結合し,更に其の上を鋼帯で締め付ける。金剛砂石の場合は常に組合式である。

 石の有する摩擦面の自然の粗さは硬い原料の磨潰のため間もなく失われ,粉砕が行はれなくなる。挽臼を常に有効な粉砕を行はしめる爲めには磨合面を時々粗くせねぱならない。この目的のために石に溝(Furrows)を切る。溝ほ普通幅2.5〜3.00cm,深さ1cm内外で中心から円周の方に向つて斜に切つてある。原料は石の中央に装入され次第にその円周の方へ押出され同時に溝の鋭縁で剪断される。

 溝の形状に関しては色々の規定があるが,次に理論的考察を加へて見る。穀類の挽臼ではEvanS法またはNagel法として多く用いられている対数曲線の溝は,硬質原料用挽臼では殆ど間題にならないで,多く米国式の直線溝が採用されている。第100図は直線

第100図 挽臼の直線溝切法

溝切法の実例であって石灰石の粉砕に使用され石の直径1500mmである。ランナーおよび底石bの溝の配置は全く同一である。石の円周を12等分し各等分点から直径200mmの案内円(Guide circle)に引いた接線が主溝(Main furrows)の位置を示し,これに平行に等間隔で穿つた溝が副溝(Secondary furrows)になる。今上下の石を互いに向合わせに重ねると両者の溝は互に交叉状になり,その挾む角は中央から円周の方へ段々減少する。これらの事実並びに溝の形状が果して如何なる閥係を有ナるか。次にその理論的考察を述ぺてよう。

 第101図において曲線bbはランナーの溝線,曲線ccは固定底石のそれを示し,aがある瞬間における両曲線の交点を示ナ。a点に於て曲線bbおよびccに対する接線をそれぞれadおよびafとし,adへの垂線agをもってa点に存在する一の粒子に対してランナーの呈する圧力kの方向と大きさとを表す。この値を固定曲線ccに関してその法線および接線の方向に分解すれば, ahおよびaiを得る。したがって,角daf=ψとすれば,各分力は次ぎの式で与えられる。

      ah=kcosψ

ai=ksinψ

而して原料に対して前者ぱ剪断力として後者はこれを円周の方への押出力として働く。

 次にmn=ρ, ma=zとおけば両曲線は互いに対称的であるから

 sin(1/2)ψ=ρ/zとなり次の如き結論に達する。 

挾角ψが石の中心から円周の方へ段々増加すれば,それに從つて剪断力は次第に滅少するが,押出力は次第に増加する。これに反し角ψが内から外へ段々滅少すれば夫れに從つて剪断力は次第に滅少するが,押出力は次第に増加する。これに反し角ψが内から外へ段々滅少すれば夫れに從つて剪断力は次第に増加するが押出力は次第に滅少する。

 次に分数ρ/zの分子およぴ分母の値を任意に変化すれば,それに從つて挾角は変化し,内から外に向つて増加または減少し溝も亦相当して曲る。分数p/zの値を常に一定に保てば挾角も亦一定となり溝は一つの対数曲線(Logarithmic spiral)となる。第101図における角famの値はa点の任意の位置に於て同一である。最後に分数ρ/zの分子を不変に保てぱ挾角は変化し,内から外に向つて次第に滅少する。然し乍ら此場合の溝は一の直線となり而して交点を通る石臼の半径は2つの溝の挾角を2等分“する。最後の場合が第100図に示したアメリカ式溝切法に相当し,他の曲線溝に比較すれば溝を常に正規の状態に維持するのが容易であるので有利であ。

 この溝は運転を開姶した後次第に磨耗し,縁が鈍くなるので粉砕原料並に石材等によつて2週間毎位に目立て(Dressing)せねぱならない。

 上廻挽臼のランナーは直径500〜1500mm,高き250〜500mmであつて同一直径の底石は上石よりも50〜150mm低く作る。回転数は250〜120r.p.m.で所要動力2〜25Hpである。以上の内直径1500mmのものについて,その容量を示せぱ中砕された石灰石1400〜1500kg/hの容量に対し動力22HPを費す。而して製品の細かさは900 mesh/cm2王に対し,篩上2%あるいは。4900mesh/cm2に対しし篩上18〜20%である。同一の挽臼でカイニート石を適当の細さに砕くのに容量7500kg/hを示し,動力2.38HP/tを費している。

 挽臼の容量ならびに動力は原料の硬さ、大きき、粘度、水分、粉砕度および石の状態などの影響によって非常に異なる。Ruhlmannによれば挽き臼の容量ならびに所要動力を表す数式に対してはランナーの直径,回転数,石の材質,上下石の間隔,溝の状態ならびに原料ならびに製品の性質等を考慮せねばならない。從つて挽臼の場合に於ても他の一般の粉砕機と同様に実際運転に於ける種々の條件に対する粉砕数値を集めて之を参考にする必要がある。

 上回転挽臼に於てはランナの重量は專ら底石の上に働き粉砕効果を呈するのであつて臼軸並に歯車は殆ど其の爲めの荷重を免れているのであるが、下回転挽臼に於ては両石の間の圧力を機械的に与えてやらなばならないのであつて、主に芋虫及び芋虫歯軍」(Worm and Worm wheel)によつて之を行ふ。是が下回転挽臼の欠点であつて、臼軸に全荷重がかかり其の爲め歯車が加熱され易い。しかしながら下回転挽臼は底石即ちランナーが早く回転しているので其の上に供給された原料は粉砕されると同時に遠心力が働いて速やかに円周の方へ押出される。從つて下回転式では原料が臼内にある時間が上廻式の場合よりも短く粉砕容量が高い利点がある。

 第102図はPo1ysiusi会社製下臼挽き臼の一例である。頑丈な基礎枠dは其の上に中枠gを支え、後者は更に3つの突起、ボルト及ぴ巻き付けスプリング(Evolute Spring)sの方法によつて上枠を取付けている。このスプリングは上枠の下にスビンドルfによつて調節可能に縣垂されている所の固定上石が飛ぴ出ない様に弾力支持をなす。臼軸cは上は中枠に固定された頸軸受,下はピボット軸受kで支えられている。底石の調節は芋虫歯車iおよび芋虫,傘歯車,スビンドル及びハンドルhなどよりなる一連の装置によって行はれる。臼軸の延長rは原料供給装置gの撹拌をなす。運転はベルト調車o,中間軸nおよび一組の傘歯車m,lによつて行はれる。そしてこの場合も組合ぜ運転可能である。この種の下

回転挽臼は石の直径800-1500mm高さ250〜450mm且つ回転数200〜130rpmで動カ4〜20Hpを費し、榛実大に中砕された石灰原料300〜1600kgを900mesh/cm2の篩に篩上3%迄に粉砕し得る。

 小容量の挽臼として染料、釉薬、薬品等の粉砕に使用されるものは簡単且つ低廉である事が要望される。しばしば移動式になつていて移動式挽臼(Transportable buhr mill)と呼ぱれる。石材としては天然石又は金剛砂石が使用される。後者であれば目立をする必要がなく時々空気溝を深くする丈けでよい。從つて取り扱いは頗る簡単であり、且つ石を鉄腕または鉄板の上に容易に取り付け得る。機械が軽く振動もないので希望する場所に移動して壁または床に数本のボルトで止める丈で運転できる。

 第103図はKampnagel社製の下回転挽臼の一例で人造石を使用している。αは臼軸で頸軸受dおよびピボット軸受cで支えられベルト調車bによつて運転される。eが下石のランナーでsが固定上石である。後者の調整は上枠の周囲に取付けた歯車i,kでボルトl 及ぴハンドルmで行われる。製品の排出口nは図に示した所の他に下枠pの任意の所に設け得る。下枠pは2つの鋳鉄柱で支えられ基礎枠qに取り付けられている。絞め金uは上枠を上げるのに使用する。原料はホッパーgから遠心振動裝入器hをへてランナーの上に供給される。供給量の調節ほホッパーgを上下する事によつてなされる。

 石の直径750mm,回転数300rpmにて動力3Hpを費し容量250kg/hである。

 垂直型の挽き臼は約70年前,米国においてEvans氏により初めて穀類製粉に使用された。その後多くの人々で改良され使用方面も広められた。例へば種々の果実の中砕,油粕,石膏,マグネサイト等の粉砕等に用されている。第104図はAlpine社製のMeteormuhleであってすこぶるる簡単に出来ている。ベルト調車bによつて運転される水平軸aに鋳鉄のマフlが取付けてあり,その周囲をスクリウ状に形造つてある。從つて上部kから供給された原料ば枠に固定された石6と軸α。に固定された回転石の周囲に出で排出日e から下に落ち扉fから取出される。ハンドルhによつて調節ボルトを回し粉砕度を調整し且強い渦巻スプリングによらて両石を抑へておいて空転の際の左の衝突を防止してゐる。

 石材としては天然石または人造石が便用され4種の大きさに作られている。石の直径260〜520mm,回転数1000-650rpmにて動力2〜12HPを費し中砕容量55〜650kg/hを示す。