行商社長よりの近況報告

(私信ですが興味深いので彼の同意を得てネットに出しました。)

 謹啓春暖の候となりましたが皆様お変わりございませんか。世の中ますますこ忙しくなりました。当方相変わらず貧乏暇なし行商三昧の毎日です。1月と2月はヨーロッパ、米国出張と相次ぎましたが世界のビジネス界はとにかく様変わり、そのスピードの速さには驚くばかりです。若いベンチャーのAOLがアッというまに大企業のタイムワーナーを飲み込むサバイバル米国、今の一ヶ月は20世紀の10年のスピードで進んでいるといわれる理由が分かる気がします。lT革命の旗手ソフトバンクの孫正義君(高校の後輩ですが)が本気でその気になれば天下の新日鉄さえ買収してしまう力がありますよ」と聞いて21世紀のビジネスは,よほどの知恵とスピードを出さないと生きていけないことが分かります。この点わが日本は完全に遅れをとってしまいましたが、戦略に勝る米国は21世紀も世界を席巻して牛耳ってしまう可能性があるような気がしてなりません。とにかく彼らは何でもかんでも米国標準にしてしまう知恵者揃いですから,われ等が通 産省のお役人では手も足も出ないツワモノなのです。  ところで今回契約のため訪問しましたシアトルとトロントの魚類標識メーカーには中国人と韓国人の技術者が新しく入社していました。「日本人はいないのですか?」 と尋ねましたら「特別 に区別しているわけではないのですが、日本の若者は押しなべて肝心の英会話が駄目なのが多いです。その点最近の中国人や韓国人は褌(ふんどし)を締めて米国にやってくるので、英会話も感心するくらいうまいのが多いのですよ。要はハングリーの差でしょうね」とのコメント。  わが日本も英語教育を根本から早急に見直さないと、李鵬さんにも小指でひねられる三流国時代が目前、、、ということになりそうです。ニューヨークの友人、宗像さん(高校の後輩で一昨年までCITIBANK本店筆頭部長、現在香港上海銀行NewYorkの上級副社長)と街外れの場末(ばずえ)のすし屋で一杯やったのですが、その事を話したら「残念ながら私の直接の部下にも日本人は一人もいないですよ。語学力はともかく、日本の若者は危機感が全く無く,考えが「甘い」。そして踏ん張りが無く直ぐ辞めてしまう子が多いのです。 飽食の時代が長すぎて、そのしっぺ返しが今ボデーブローのように効いてきているのです。日本はも一度ドン底に落ちないと目が醒めることはないんじゃないですか?」となかなか辛らつな意見でした。ところで「外国からわが国を見ていると実によく日本が見えるから不思議ですね。ニューヨークに住んでいる日本人たちは皆、NHK(NYでは日本航空がスポンサーの民間番組)を毎日熱心に見てますから、「日本の色んな出来事は日本に住んでいる人達より詳しく知っているんじゃないでしょうか、、、」ということでした。またオブチ総理やKONO外務大臣がワシントンに見えても最近は新聞の端っこにも載らないのですから情けないですよ。オブチさんでは国力、降下一方、、、というのが私達の評価というところでしょう、、、と。 来月は下旬から二一スの世界水産展示会への出展でドイツ経由で出稼きです。先月はニューヨークからの帰途、太平洋上でエンジントラブル、飛行機が降下している感じがしていたら機内放送があり「火災の危険があるので第二エンジンを止め3時間かけてアラスカヘ引き返します」。正直ハラハラしましたが満杯の乗客に殆ど動揺が無かったのには些か感心しました。でも次回からは家族、社員は別 別便で出掛ける必要があると思った事故でした。  話は変わりますが重なる警察庁不祥事件で思い出したことがあります。2年前のある朝、わが社の中国人社員、貴君があたふたと日経新聞に赤線を引いて持ってきました。そして曰く、「社長!これを見て下さい、今日発表された人事(事務次官クラス)の80%が東大法学部ですよ。これじゃ日本の政治は将来必ずおかしくなると思いますね。同じアナグラで教育を受けた人達は発想もやり方も似たようなことしか出来ません。この人達が日本の政治を引っ張っていくなど世界の常識では考えられない事ですし例もありません。賢い日本人が何故こんな不思議に気付かないのか僕らには分からないですよ、、、」と。残念ながら「馬券大当たり」となってしまいました。    ところで米国政府はコンピューター等の特殊技術を持つ外国人にバリバリ米国市民権を与える頭脳流入作戦を取り始めています。日本も早く旧弊を打破、一大変革の作戦を試みないと並々差が開く一方で、またもや苦渋を舐めさせられる結果 になるでしょう. 純粋培養、単一民族日本の脆さ、多民族国家アメリカの強さ、したたかさ。今回の事件で少しばかり謎が解けたような思いがしました。  遅まきながら来月一日からから米国No4 WestMarineTechnorogy社の支援でシアトル事務所を開く事になり、昨日社員一家を送り出しました。ボーイング、マイクロソフトが本社を構えているだけに情報も多いのではと決断しましたが、120年.ぶり初めての海外事務所で暗中模索の一年となりそうです。ド田舎の小会社にとって投資は少なくありませんが、10年後にはベストタイミングだったと言えるようになれば、、、と期待しております。 tanaka-sanjiro

2000.3.16.