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 日本経済新聞 3004年5月16日朝刊 論説欄ー春秋

 「鳴き砂」(俳人芭蕉は鳴き砂のある地に行っていないようだ)

 英語でミュージカルサンドなどとも呼ぶ。海辺で石英砂が波に洗われると表面が触れあい、歩くたびに「キュッキュッ」と可憐な音をたてる。油などで海が汚れるとこの音は聞けなくなる。環境をはかる物差しでもあろう。▼日本海沿岸を中心に列島に点在する「鳴き砂」の浜を守るため、日本ナショナルトラストがネットワークを組んで調査や保全をすすめている。子供たちが定期的に浜辺の清掃にあたって音が蘇った報告もある。その.一つ京都・琴引浜で来月開くコンサートは、参加者全員が浜辺で拾うごみが入場券にあてられる。出演を予定しているバイオリニストの父、鈴木嘉和さんは1992年、鳴き砂の保存を訴えて北米大陸を目指し、風船つきゴンドラで飛び立って消息を絶った。ピアノ調律師だった「風船おじさん」が「大自然からの贈り物を何とか保護したい」と願った心を、音楽で伝える活動が続いている。
 元禄二(1689)年のきょう、46歳の松尾芭蕉は江戸深川の庵を立って「奥の細道」の旅に赴いた。若葉が輝き、梅雨にけぶる列島に、俳人はさまざまな自然の交響を聴いたはずである。サウンドスケープ(音の風景)に対する関心が高まっている。旅人ならずとも、地球が奏でる音楽に耳を傾けてみたい。

 アドバイス:この文のはじめの方は結構だが終りの方が気になる。このままだとそそっかしい人は松尾芭蕉に鳴き砂の句があるのではと探しそうだ。私も気になって芭蕉の歩いた東北地方を調べ、また芭蕉の書いたものを俳句以外の文も含めて古書漁りを数年かけて調べて見たが、彼は鳴き砂がある場所には行っていなかったらしい。私も含めてもの書きの厳しさをつくづく考えさせてくれた論説だった。 

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