貝毒って何?
chimai's

 貝類情報交換のページの貝毒について、貴重な情報をいくつか頂きました。
そこで、貝毒は私たちの食生活にも直接関係のある事ですので、ここで頂いた情報をまとめてみました。 貴重な時間を割いて情報を下さった皆様には厚くお礼を申し上げます。

matushita

  1. ミミガイ科による春の中毒。アワビで有名ですが、 アワビの産卵期(春)にわたと言われる部分を食べますとビタミンAの過剰摂取がおこり、 光過敏症を起こします。猫が摂取すると耳がちぎれるまでかきむしると言われています。
  2. 貝を趣味にされる方は、イモガイ類やヒョウモンダコによる毒の被害のほうが重要ではないでしょうか?
日本自然保護協会の野外における危険な生物が詳しいと思います。
南西海区水産研究所 赤潮環境部 松山 幸彦

 二枚貝は海水中のプランクトンを鰓でこしとって食べています。海水 中のプランクトンの中には人間に有害な毒を作る種類がいて、これらの 作る毒が貝に蓄積され、二枚貝が毒を持つようになります。これがいわ ゆる「貝毒」です。貝自身に毒を作り出す能力は全くありません。
 貝毒には症状によっていくつか知られていますが、 日本で問題になるのは麻痺性貝毒(PSP)と下痢性貝毒(DSP)で す。麻痺性貝毒は、アレキサンドリウムという渦鞭毛藻の一種が原因です。 このプランクトンは普段海底の泥の中にタネ(休眠細胞)の状態で潜ん でいて、水温が適当な時期になると発芽・増殖し、海水中に多量に現れ ます。瀬戸内海だと、だいたい4ー5月にかけて発生します。従って、 カキなどの貝毒発生もこの時期に集中します。
もう一種類ギィムノディニィウム・カテナータムという種類も同じ麻痺性 貝毒を作ります。これは山口県の仙崎湾という所でカキを毒化させるこ とで(関係者の間では)有名です。
サキシトキシンはアルカロイドの一種で、フグ毒で知 られるテトロドトキシンと作用が良く似た猛毒物質です。神経のナトリウ ムチャンネルを阻害する作用があります。唇や手足のしびれ、嘔吐や頭痛 などの症状があり、ひどいときには死に至ります。この物質は熱に安定なので、 加熱しても毒は減衰しません。面白いことに、二枚貝は毒を蓄積しても 死ぬことはありません。何らかの機構で解毒する機構があるものと考え られています。
 下痢性貝毒は、ディノフィシスというプランクトンが原因で発生します。 この貝毒が一番問題になっているのは東北から北海道にかけての地域で ホタテガイなどが毒化します。毒の成分はジノフィシストキシンという 物質です。
 海外では、最近記憶喪失性貝毒の発生が見られるようになっています。 日本ではまだ発生していませんが、原因となるプランクトンは存在して いるようなので、今後の発生が懸念されます。
 これら貝毒の発生は水産庁および各県水産試験場、厚生省などにより、 検査態勢が確立されており、毒化した貝が店先に並ぶことはまずあり ませんので安心して下さい。ただ、潮干狩りや個人的に採取した 二枚貝を食べる場合は注意が必要です。貝毒の発生が心配される時期 (3-7月)には、新聞や自治体の情報でくれぐれも安全を確認して下さい。


福島県立医科大学 生化学第一講座 伊東 利光

 カキの貝毒は,カキが作った毒ではありません。 カキの餌となるプランクトンの中に毒を作る種類がいて、そのプランクトンを餌として 取り込んだカキが毒を持つようになります。
 この貝毒プランクトンは大きく2種類に分けられ、

どちらのプランクトンも、カキだけでなくホタテガイムラサキイガイ(ムール貝)など、 この種のプランクトンを餌とする貝類なら毒化する可能性があります。
 これらのプランクトンは水温が高くなると増殖します。したがって,夏になると貝 類が毒化する可能性が高くなります。この時期がちょうどカキの産卵期にあたるため 、牡蠣自身が毒を持つと誤解される方が多いようです。
 しかし毒化した貝類でも、貝毒プランクトンのいないきれいな海水で数日間飼育すると、 貝毒が代謝されて無くなっていくことがわかっています。これを利用して、貝毒のない 貝類を出荷しようと努力している漁業者の方々もいます。
 また,水産試験場などでは貝毒プランクトンの出現を警戒したり,貝類に含まれる 毒性をチェックしており、危険な場合は貝毒警報を発令して市場への出荷が停止され るようになっています。
 日本と北米沿岸では、一年を通じて貝が毒化することがわかっているようです。 もちろん、水温が低くなると発生件数は少なくなるようです。基本的には、貝毒プラ ンクトンが発生すると毒化すると考えられます。
 プランクトンは、水温の上昇以外にも海水が冨栄養化する(リンや窒素などの栄養 源が多くなる)と増えやすくなります。したがって、海水の栄養分が多くなりすぎる と貝毒も起こりやすくなります。
 この点から考えると、人間がプランクトンの栄養源を排水として流した結果、 人間にとって害となる貝毒が起こりやすくなったとも言えるでしょう。

 水産庁や各都道府県の水産関係の部署には一般の方々の質問を受け付けてくれ る窓口を設けているところもあります。
 参考までに 農林水産省がWWWで案内をしている「消費者の部屋」というものがあります。


信州新町化石博物館成田 健

 貝には種類によって毒を持っているものがあります。捕食するときに相手に毒 をさして動けなくなってから食べるという種類や、自分の身を守るために用いら れる毒もあります。今回は生活の中の貝ということで、食べる貝について紹介し ます。夏にかけて貝の産卵時期は貝の中に毒が多くなるようです。死亡例もある 中毒がありますので、是非気をつけてください。

食中毒を起こす貝と毒
ヒメエゾボラ
エゾボラモドキ
唾液腺に含むテトラシンが原因
頭痛・めまい・船酔い感
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メガイ・トコブシ
エゾアワビ・サザエなど
中腸腺のpyropheophorbide αが原因
顔面・四肢に灼痛、やけど様の水泡、化膿、顔面・手・指の赤発、はれ、疼痛
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バイ スルガトキシンが原因
腹痛、嘔吐、下痢、四肢のけいれん、意識混濁、死亡
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イガイ・ホタテガイ
アサリアカザラ・カキ
麻痺性貝毒 赤潮をつくる数種の有毒渦鞭毛藻 Gonyaulax spp.が原因。 貝自身にはまったく影響なし
唇・舌・顔面のしびれ、四肢の末端に、運動失調、言語障害、呼吸麻痺、死亡
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アサリ毒 渦鞭毛藻のExuviaell mariaeが原因
皮下出血・粘膜からの出血・肝機能低下・精神錯乱・昏睡・死亡
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エゾワスレ コリンエステラーゼが原因
じんましん・胃腸症状など
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渦鞭毛藻
Gymndodinium breve
によって毒化する二枚貝
運動失調

参考文献:
魚介類の毒 橋本芳郎(1977) 学会出版センター
最近出版された貝毒についての本
NHKブックス 768 フグはなぜ毒をもつのか 海洋生物の不思議 野口玉雄
第4章に貝の毒についての説明がある。

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