二枚貝は海水中のプランクトンを鰓でこしとって食べています。海水
中のプランクトンの中には人間に有害な毒を作る種類がいて、これらの
作る毒が貝に蓄積され、二枚貝が毒を持つようになります。これがいわ
ゆる「貝毒」です。貝自身に毒を作り出す能力は全くありません。
貝毒には症状によっていくつか知られていますが、
日本で問題になるのは麻痺性貝毒(PSP)と下痢性貝毒(DSP)で
す。麻痺性貝毒は、アレキサンドリウムという渦鞭毛藻の一種が原因です。
このプランクトンは普段海底の泥の中にタネ(休眠細胞)の状態で潜ん
でいて、水温が適当な時期になると発芽・増殖し、海水中に多量に現れ
ます。瀬戸内海だと、だいたい4ー5月にかけて発生します。従って、
カキなどの貝毒発生もこの時期に集中します。
もう一種類ギィムノディニィウム・カテナータムという種類も同じ麻痺性
貝毒を作ります。これは山口県の仙崎湾という所でカキを毒化させるこ
とで(関係者の間では)有名です。
サキシトキシンはアルカロイドの一種で、フグ毒で知
られるテトロドトキシンと作用が良く似た猛毒物質です。神経のナトリウ
ムチャンネルを阻害する作用があります。唇や手足のしびれ、嘔吐や頭痛
などの症状があり、ひどいときには死に至ります。この物質は熱に安定なので、
加熱しても毒は減衰しません。面白いことに、二枚貝は毒を蓄積しても
死ぬことはありません。何らかの機構で解毒する機構があるものと考え
られています。
下痢性貝毒は、ディノフィシスというプランクトンが原因で発生します。
この貝毒が一番問題になっているのは東北から北海道にかけての地域で
ホタテガイなどが毒化します。毒の成分はジノフィシストキシンという
物質です。
海外では、最近記憶喪失性貝毒の発生が見られるようになっています。
日本ではまだ発生していませんが、原因となるプランクトンは存在して
いるようなので、今後の発生が懸念されます。
これら貝毒の発生は水産庁および各県水産試験場、厚生省などにより、
検査態勢が確立されており、毒化した貝が店先に並ぶことはまずあり
ませんので安心して下さい。ただ、潮干狩りや個人的に採取した
二枚貝を食べる場合は注意が必要です。貝毒の発生が心配される時期
(3-7月)には、新聞や自治体の情報でくれぐれも安全を確認して下さい。
カキの貝毒は,カキが作った毒ではありません。
カキの餌となるプランクトンの中に毒を作る種類がいて、そのプランクトンを餌として
取り込んだカキが毒を持つようになります。
この貝毒プランクトンは大きく2種類に分けられ、
水産庁や各都道府県の水産関係の部署には一般の方々の質問を受け付けてくれ
る窓口を設けているところもあります。
参考までに
農林水産省がWWWで案内をしている「消費者の部屋」というものがあります。
貝には種類によって毒を持っているものがあります。捕食するときに相手に毒 をさして動けなくなってから食べるという種類や、自分の身を守るために用いら れる毒もあります。今回は生活の中の貝ということで、食べる貝について紹介し ます。夏にかけて貝の産卵時期は貝の中に毒が多くなるようです。死亡例もある 中毒がありますので、是非気をつけてください。
食中毒を起こす貝と毒 | |
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ヒメエゾボラ エゾボラモドキ |
唾液腺に含むテトラシンが原因 |
頭痛・めまい・船酔い感 | |
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メガイ・トコブシ エゾアワビ・サザエなど |
中腸腺のpyropheophorbide αが原因 |
顔面・四肢に灼痛、やけど様の水泡、化膿、顔面・手・指の赤発、はれ、疼痛 | |
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バイ | スルガトキシンが原因 |
腹痛、嘔吐、下痢、四肢のけいれん、意識混濁、死亡 | |
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イガイ・ホタテガイ アサリ ・アカザラ・カキ |
麻痺性貝毒 赤潮をつくる数種の有毒渦鞭毛藻 Gonyaulax spp.が原因。 貝自身にはまったく影響なし |
唇・舌・顔面のしびれ、四肢の末端に、運動失調、言語障害、呼吸麻痺、死亡 | |
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アサリ毒 | 渦鞭毛藻のExuviaell mariaeが原因 |
皮下出血・粘膜からの出血・肝機能低下・精神錯乱・昏睡・死亡 | |
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エゾワスレ | コリンエステラーゼが原因 |
じんましん・胃腸症状など | |
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渦鞭毛藻 Gymndodinium breve によって毒化する二枚貝 |
運動失調 |